≪ラジャ・バナジー氏の失意と落胆。でも茶園の人々を信じて・・≫
茶園には7つの村があります。そのひとつのチェプティ(CHEPTAY)地区の茶畑の中に自動車道路が建設中でした。ここにはすでに人が通る道があったのですが、その道を広げたのです。2トンの生産量になる茶の木が抜き取られました。
≪茶畑の中に今まであった人の歩く道を広げた自動車道路。これから石を敷き詰める作業になります。≫

政府の理由は、「ダージリン開発発展のために」との理由です。最終的にチェプティ(CHEPTAY)地区の茶園の人々がOKを出しました。しかし、車が通れる道は必要がなかったのです。
現在茶園の人ではない工事人が入って仕事をしています。

ラジャ・バナジー氏は、「40年間、環境保護、良質紅茶製造のためにバイオダイナミック農法をとりいれ、茶園の人々の福祉にも尽力してきたのに・・・」と、何度も何度も悔しそうに話されました。
茶園に到着してすぐに現場をみてびっくりしていた私も、ラジャ・バナジー氏の失意と落胆に共感、理解できるだけに言葉もありませんでした。
自動車道路ができたために起こりうる被害を最小限に防ぐ方法はないか?
次の日、毎週月曜日に開かれる「森林レンジャー部隊」の恒例の会議がありました。
マカイバリ茶園の敷地の3分の2を占める原生林(400ha)には、無数の動物が野生のまま生息しています。WWFに登録されている2頭のベンガルトラをはじめ、18頭のヒョウ、ウサギやサル、シカ、リス、そして300種類以上もの野鳥など、まさに自然のパラダイスです。また、紅茶の葉の擬態動物「ティー・ディバ」も生息しています。
マカイバリ茶園では森林レンジャー部隊を作り、原生林を毎日観察し、週に一度行われるミーティングで、動物たちの様子が報告されます。自然と人間が共存するためには、生態系の小さな異変に一早く気づき、対処することが必要なのです。
≪現在20名の森林レンジャー部隊の会議。机の上にある分厚いノートが過去40年間の記録です。≫

≪森林レンジャー部隊の人 ≫

≪森林レンジャー部隊の人 ≫

≪森林レンジャー部隊の人 ≫

その会合の最後に、ラジャ・バナジー氏は、皆にゆっくりとそして力をこめて自動車道路のことを話されたのです。
「道路ができてしまったことは仕方がない。しかし次の3つの問題点がある。
≪熱をこめて森林隊の人に話すラジャ・バナジー氏≫

1)茶の木を抜き取ったために、土砂崩れ現象がおきやすくなって危険な状態。村人の家が崩れる可能性あり。
2)自動車道路に砂と石を敷いたために、茶畑が石や砂で覆われてしまう。もうすでに始まっている。
3)大雨が降ると茶畑に新しい水の流れができて、茶の木をなぎ倒していく。
以上の3つの危険な問題を解決するのは、木と植物を道の両脇にたくさん植えることである。すぐに実行しよう!」
会合の後、すぐに、森林レンジャー部隊と私と外回りマネージャーのタルさんと現場に行きました
≪自動車道路になる前は、このような人が通る道でした。≫

ところが 両脇の茶の木、植物 木が抜き取られた後、石が敷き詰められてこのように広い道になっていました。
≪タルさん、森林レンジャー部隊の人たちで現場を視察≫

≪土砂崩れしそうな場所≫

≪自動車道路のすぐそばの家≫

≪石で固めた工事≫

≪石が茶畑に入ってしまい、土を覆ってしまう≫

≪茶畑の中にできた雨による水路。すでに茶の木がなぎ倒されている≫

誰もが現場をみてラジャ・バナジー氏の指摘した危険性の話に納得して、「すぐに行動開始!」と決意していました。
森林レンジャー部隊は、ラジャ・バナジー氏の強力なるサポートチームです。3メートル以上にもなる広い道の両脇にびっしり、木と植物が植えられることを、陰ながら応援していきたいです。
森林レンジャー部隊が観察している、原生林の楽園が、政治主導で、ダージリン開発発展、経済発展の名目のもと破壊されないことを切に願います。
≪森林レンジャー部隊の報告内容の一部です。≫
1)豹がヤギを食べてしまった。
2)大きな鳥が、木になっていた実をすべて食べてしまった。
3)野生の猫が鶏を食べてしまった。
4)虎が川を越えて村に出てきて牛を殺して食べてしまった。
5)今まで見たことのない鳥がいた。
*ラジャ・バナジー氏はすぐに鳥事典で調べて確認をしていました。
そのほかいろいろとネパーリ語で報告していました。
【続く】